威鶴の瞳


財布の中から1000円札を取りだし、はいと渡される。

それを受け取り、彼女を見返す。



「少し心が落ち着きました。ありがとうございます」

「いえ、私こそ、急に呼びとめてしまって……」

「急いでいたわけでもないので、大丈夫ですよ」



そう言って、彼女はエスカレーターの方へ向かって行った。



トーマとは、以ていなかった。



あの人は優くて人の世話が好きなお姉さんタイプ……って、本当にトーマのお姉さんだけど。

下の二人はヤンチャだから、子供時代は2人の世話で精一杯だったのかもしれない。



いいお姉さんだと思う。



「……はぁ」



ひとつ、ため息をつく。



トーマ、か。

今頃寝てるんだろうな。

どっかのオネーサンも一緒だったりして……さすがにまだないか。



いいな。

寝られるって、いいな。

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