威鶴の瞳


大きく1つ、深呼吸をする。

私も、眠ってしまいたい。

深い深い眠りについて、ユラユラ、ユラユラ、夢の中を浮遊していたい。



でも、私は怖いんだ。

眠っている間に、私は消えてしまうんじゃないか。



向こうの世界と、入れ替わってしまうんじゃないか。



そう考えると止まらなくて、怖くなる。



消えたく、ない。



「すみません、今大丈夫ですかー?」



そうしている間にも、また一人、未来を知りたい人が来る。

珍しく、男の人だった。



「はい、大丈夫ですよ。どうぞ座ってください」

「あ、いや、このままでいーんで」



そう言って彼は机に手をつき、そこに体重を乗せる。



……どういうことだろう?

急いでいる人、なんだろうか?



でも急いでいるなら遊びの部類に入る『占い』をする意味がわからない。



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