威鶴の瞳
「彼女は今、事件に巻き込まれています」
「──え?」
彼が目を見開き、絶望の色を見せた。
「え、なんで、どうして、どこ、今、どこ──」
「落ち着いて下さい、今はきっと……もうこの場所から離れている可能性が高いです。移動しているか、別の場所で一時的に閉じ込められているか」
明らかに焦り始める、彼。
正直、今はどうしようもできない。
警察に連絡したとしても、捜査が始まる頃には移動し終えているだろう。
私が関わらない場合だと、彼女は半年、姿を現さない。
そこに警察が関わらないはずがない。
とすると、行方不明なままか、最悪──殺人の可能性も頭に置いておくとして。
マズイかもしれない。
そして私は紙を取り出した。
このまま彼の過去から彼女の未来を見続けるには、私の体力が足りない。
確実に彼女の安全を知るためには、時間をかけて私が休んででも、彼女の未来を知る必要がある。