威鶴の瞳
合同捜査、始動
過去を切り、現実に戻る。
「彼女からは、何か聞いていませんか?」
一つ、彼に聞いてみる。
「いえ……様子がいつもと違うから聞いてはみましたが、答えませんでしたし……」
それは、異変には気付いていたということだろう。
そして、攫われるとまでは、彼女も考えていなかった。
ただ、忘れようとした。
だから誰にも話さなかった。
そういう感じに見える。
「彼女の状況は最悪です。暫くの安全は確実ですが、精神的に追い詰められる状況下です」
身の危険を考えると、今の状況はまだいいとして……。
「とりあえず、この件は私の方から紹介した機関に回します。あなたは夜、指定の場所に行ってください。私からは以上です」
「……あ、ありがとうございました……」
彼は今きっと、居ても立っても居られない状況だろう。
カタカタ、震えていた指先……いや、全身。
安心どころか、不安が大きくなったことだろう。