威鶴の瞳
「あぁ、そうか。俺は威鶴。二人ともずいぶん俺のことを知っているようだけど、一応。今回はよろしくお願いします」
そう言って俺は小さく頭を下げた。
そこで依頼人が話しかけてきた。
「あの、いづるさん、一つ聞きたいことがあるんすけど」
『威鶴』としては初対面の渡辺春。
名前に引っかかったか……。
「なんですか?」
「『いづる』って……なんつーか、あのですね……」
占い師さんも依鶴でした!
なーんて言おうとしていることはなんとなくわかる。
ただ、性別だ。
依鶴は女。
威鶴は男。
同一人物かと聞くにも、まず性別の壁。
彼は少し混乱しているのかもしれない。
「ここを紹介した占い師の依鶴なら、家族みたいなようなものだと思っていい。ここに居る奴らは全員本名ではないですから」
「あ、そうなんすか。じゃ、はじめまして威鶴さん。渡辺春です」
「よろしく」