威鶴の瞳
心の傷
「──どういうことだ?」
トーマが、めずらしく俺に対して低い声を出してくる。
トーマの中での俺の位置は、恩人のようなものであり、少なくとも信頼されている。
そんな俺に、少しの怒りを見せたトーマ。
それは、いつもの冗談に返すのではない、本気に本気で返した証拠。
俺が本気で言っているのだと受け取り、それに対して本気の対応をした。
だからこそ彼は怒った。
互いに真剣だからだ。
「オイオイトーマ──むぐっ」
ただ事じゃない空気を感じた雷知が、マサルの囗を手で封じてくれた。
ナイス。
「確実性はない。でもトーマの昔の仲間がこの事件に巻き込まれているとするならば──もし、さっき雷知の記憶で見た奴がトーマの過去の中にいたならば、そいつの未来を見る事が出来る」
「……」
「もしそいつが事件に巻き込まれていたとしても、渡辺春の彼女が相手の姿を見る事がなかったように、犯人を見たり場所の特定が出来たりはないかもしれない」
「……あぁ」
「ないという根拠もない」
「あぁ」