威鶴の瞳
「……悪い、威鶴」
その答えは、NO。
トーマはまだ、過去を吹っ切っていない。
それを少し、悲しく思う。
「大丈夫だ。トーマの記憶が手っ取り早いだけで、その男を知ってる奴なら誰だって──あ」
「あ?」
俺は言いながら、一つの可能性に気が付いた。
XXビル7階。
パスワードは1298
ガチャリ、開いた扉の中にいるのは、つい先日敵にしていた面々。
俺に向くなり「うげっ」と声を発した、その男。
「今度は何だってんだ?竹原の連れさんよぉ」
そこにいたのはこの前のトーマの妹の依頼で来た時に対立したここのTOP、八坂。
そう、この男はトーマの知り合い、つまりあの男を知っている可能性がある。