教組の花嫁
「それが、こんな展開になるなんて」
小波は思わぬ物事の展開に、ただただ驚くばかりであった。
小波は1DKの自宅マンションで、コーヒーを飲みながら思案をしていた。
「どうしょうか」
ブラックのコーヒーをひと口啜った。
ほろ苦い。
自分の今の状況と似ている。
小波はそう思った。
視線を動かすと、机の上の写真立てが目に入って来た。
写真立てには、3枚の写真が飾られている。
一枚は、小学校入学の時に両親と3人で撮った写真。
もう1枚は、出版社の仲間と、旅行に行った時の写真。
最後の1枚は、中学1年生の時の写真。
東京の叔父の所で暮らしていた、思い出したくない頃の写真。
その写真を見ると、どんな苦労にも耐えて、一人で生きて行く事が出来る。
最後の一枚は、生きる勇気と、その時の屈辱を忘れないために飾っている写真だった。
小波はその写真をじっと見続けた。当時の事が少しずつ思い出された。