教組の花嫁

 「ううっううっ・・・」


 小波はひたすら泣いた。


 「仕方のない奴だな。わかった。わかった。もう、何もしないから」


 叔父が抱いていた腕の力を弱めた。


 「ううっ・・・」


 「この事は絶対に内緒だぞ。誰にも喋るのじゃないぞ。わかったな」
 「うん。ううっ・・・」


 小波は泣きながら首を縦に振った。



 この瞬間から、小波は叔父の家を一日も早く出なければならない、と考えていた。
 両親を亡くした子供の現実は、悲惨だった。


 歯を食い縛って耐えた辛い子供時代を、小波は写真を見ながら思い出していた。


 今も、その時の心の痛みと、男の怖さを、小波ははっきりと覚えている。

 当時を思い出し、小波は今の自分なら、何でも出来ると思った。





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