教組の花嫁
「無の境地には入れたかね」
20分ほどして、道心が口を開いた。
「いいえ」
小波が率直に答えた。
「どうしてだね」
道心が、そのままの姿勢で小波に質問をした。
「教祖様の事が気になって」
「君は正直だね。では、これから言う質問にも正直に答えたまえ」
道心が背筋を伸ばし、目を閉じたままの姿勢で言った。
「はい」
小波は道心が何を質問するのか、次の言葉に息を潜めた。
「君はなぜ千葉君の申し出を承諾したのかね」
道心が、いきなり鋭い質問を小波に浴びせた。
「千葉様の熱い熱意に負けたからです」
「私を侮ってはいけない。君の青春を犠牲にさせたものを正直に言いたまえ」
(教祖様は私を見透かしている。嘘はつけない)
小波は道心の鋭い洞察力に恐れを成した。