教組の花嫁
「君が9歳と言えば・・・」
「今から18年前です」
小波が答えた。
「教団が設立して20年ちょっとだから、設立して間もない頃か。思い出した。もしかして、君は淀川大橋の近くに住んでいなかったかね」
「はい、その当時は、そこに住んでいました」
「やはり、そうか。君のお父さんの事は良く知っているよ。当時、まだ、信者が少なかったが、君のお父さんは私の話を熱心に聞かれていたのを、良く覚えているよ」
道心は、星野小造の人の良さそうな顔をはっきりと思い出していた。
「私がわからないのは、復讐するなら、なぜ千葉君の申し出を受けたかと言う事だ」
「それは、教祖様が私の思っていた人物と余りにも違うので、もっと良く知りたいと思ったからです」
「どう違うのかね」
道心が鋭く追及した。
「私は教祖様が好色で、冷酷で、欲深い方だと、思っていました」
小波は、道心を知る前に抱いていたイメージを率直に道心に述べた。