教組の花嫁
もうひとりは、本妻の泰子だった。
「もしもし、昨日はどうやった?」
「・・・」
(礼儀知らずの人だ。この人の電話は、いつも行き成り用件を言うから面食らう)
百合葉が溜息を付いた。
「ああ、奥様ですか。昨日ですか。教祖様は小波さんを、いたく気に入られたみたいですよ」
「へえ、信じられへんな」
泰子が信じられない様子が、声の調子からも百合葉には良くわかった。
「先程、教祖様から、君の好意を有難く受け取らせてもらうと電話がありましたから、間違いないですわ」
「ほんまかいな。あの道心が・・・信じられへんな」
泰子は信じられない様子。
「教祖様は早く跡取りの顔が見たい、と言われていましたよ」
「へえ、そんな事まで、言うてるのんかいな」
泰子が呆れている。
百合葉は泰子に嘘を付いた。
態度の大きい本妻に、百合葉は精一杯のいけずがしたくなったのだ。