教組の花嫁
 
 「小波とか言う子より、若って美人でっせ」

 「私には小波君だけで十分だよ」

 道心が強い口調で言った。

 「二人いて損はあれしまへん。二人で競ってもろて、はよ跡継ぎ作らはったら、よろしいやおまへんか」

 「私にはそんな者は必要無いんだ。忙しいから、帰れと言ってるのがわからないか」
 
 道心はくだらない用事で時間を奪う泰子に苛立っていた。



 「そんな事言わんと、気軽に摘み食いしなはれ。体かてピチピチでっせ」

 泰子の売り込み方は、まるで新鮮な魚を売る魚屋のようだ。

 「君は私を怒らせたいのか」

 「そうでっか。わかりましたわ。そんなら今日の所は帰りまひょ。必要になったら呼んでおくれやっしゃ」

 「私には必用無いと言っているだろう」
 「ほな、さいなら。これっ、あんたも礼をしんかいな」

 喋るだけ喋って、泰子が純に礼をするよう促した。

 呆気に取られていた純が慌てて
 「失礼します」
と言って頭を下げた。

 「今日の教祖は、えらい機嫌が悪いなあ」

 泰子はぶつぶつ言いながら教祖室から引き上げた。
 純も泰子の後から、ばつ悪そうな表情でついて行った。





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