教組の花嫁
 
 泰子が、ノックもせずにずかずかと教祖室に入って来た。

 「ノック位せえや。いま、忙しいねん。今日は何の用や。手短にな」

 泰子と二人っきりになると、道心が関西弁で呟いた。

 「ええもん、あんたに見せたろと思てな」
 「ええもんて、何や」

 道心が怪訝な顔をして泰子に尋ねた。

 「ほれ、見てみ~」
 「何や、これ」

 「よう見てみいな。あんたのこれが写ってるで」

 泰子が左手の小指を立てた。


 「あんたのこれは、キャバクラでバイトしてたみたいやで」


  泰子がにやにやと笑っている。

 「それが、どないしてん」
 「跡継ぎの母親が、水商売上がりでもええのんかいな」

 「・・・」
 「これ読んでみいな」


 泰子は道心に興信所のレポートを渡した。





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