教組の花嫁

 「お前、調べたんか。余計な事をしやがって」

 道心が腹立たしさを如実に顔に表した。


 「どこの馬の骨かわからん者に、跡継ぎを産ませられへんからな」

 泰子が、道心の執務デスクの端に座って呟いた。


 「大学の時にクラブでバイトして何が悪いねん。むしろ、偉いやないか。家が貧しいて大学行きたかったら、仕方のない選択やろ」

 道心が小波を擁護した。


 「よう言うわ。教祖の子供の母親が水商売上がりなんて。うちは恥ずかしいわ」
 「恥ずかしかったら、出て行ってくれてもええで」


 「あんた、それ本気か」

 泰子が顔色を変えた。


 「本気や」
 「ようそれだけ冗談言えるわ。もう、帰るわ」


 道心が本気で言っている事を知ると、泰子は早く退散する事に決め込んだ。


 「今度、そないなあほな事言うなら、離婚証書に印鑑押させるから、そのつもりでな」
 「うちは、絶対に離婚せえへんからな。覚えとって」


 捨て台詞を残すと、泰子は逃げるように教祖室を退散して行った。





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