教組の花嫁

 夜、道心が瞑想室に行くと、予想通り小波が瞑想をしていた。


 「いいかね」
 道心が小波に近付いた。

 「はい」
 小波が、目を開けて道心を見詰めた。


 「君は大学時代に、北のクラブでバイトをしていたのかね」
 「は、はい。どうしてそれを」


 「妻が興信所で調べたみたいだ」
 「はい、していました。それが、何か問題あるのでしょうか」
 小波が不安そうな顔をした。


 「心配しなくてもいい。何も問題は無いからね。もし、妻がその事で何か言っても、気にしなくていいからね」
 「はい、わかりました」

 「話はそれだけだ。君はそのまま瞑想をしていてくれたまえ」
 そう言って、道心は瞑想室から出て行った。


 小波には、忘れたい過去があった。

 (出来る事なら、思い出したくない)

 (しかし、自分の過去を、奥様が何かの目的を持って暴き出したとしたら・・・)


 小波は大学時代を思い起こしていた。







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