教組の花嫁
小波は吐き気でムカムカしていた。
その時、煙草のヤニ臭い臭いが、小波の口に近付いて来た。
嫌な臭いで小波は戻したくなった。
「ゲエ~、ゲエ~~」
客の口に向かって、小波がげろを口いっぱいに吐き出した。
「わあああっ、ばかっ・・・」
客は、タクシーのドアを開けて外へげろを吐き出した。
「ピエッ、ペエッ、ペエッ・・・」
「馬鹿野郎、このあま、俺にげろを飲ましやがった」
タクシーの運転手は、慌てて中にこぼれたげろを始末している。
小波はその隙にもう一方のドアを開けて、よろよろよろけながらそこから逃げ出した。
そんな事があって、そのクラブは首になった。
小波はクラブを辞め、またスナックに勤め始めた。
思い起こすと、いい思い出は両親を亡くして以来、少しも無かった。
悲しい事ばかりが、小波の過去の積み木になっていた。