教組の花嫁
小波は、教団の前に待たせているタクシーに乗り込んだ。
窓から外を見た。
教団の建物が見える。
「さようなら」
小波が建物に向って小さく呟いた。
(あなたの本当の気持ちがわかったので、ここに居る訳にはまいりません)
小波は母親の感情を裏切る事は出来なかった。
(さようなら)
小波は、心の中で道心に別れを告げた。
タクシーが走り出した。
小波は永心を見た。
永心は道心に良く似た寝顔で、すやすやと眠っていた。