教組の花嫁
 
 「ここにいるとは、思わなかったよ」
 

 道心が、小波と永心を見ながら口を開いた。


 「調べたのですか」
 「ああ、永心が心配だったので・・・」


 道心が、部屋に入り胡坐を組んで座った。

 「永心は元気なのか」

 ベビー布団で寝ている永心を見て、道心が呟いた。


 「元気ですわ」

 小波が最小限の言葉で答えた。

 「それは、良かった」

 道心は、そう言うと何か考えているのか、口を開かなかった。





 1DKの狭い空間に、沈黙が続いた。
 道心が漸く口を開いた。



 「戻ってくれないか」

 道心が心の奥から声を絞り出した。



 「・・・」



 小波は無言でじっと下を向いていた。





 
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