教組の花嫁
「では、教祖室で離婚届を渡すから、それにサインと捺印をしてくれないか」
「印鑑を取って来ますよって・・・」
泰子が、印鑑を取りに階段をとぼとぼと下りて行った。
百合葉は、哀れな泰子の後ろ姿を見送っていた。
(これで終わりね。いい気味だわ。でも、こんな哀れな姿で幕が降りるなんて。全く、想像も出来なかったわ)
百合葉がにんまりと微笑んだ。
暫くすると、泰子が印鑑持って教祖室に入って行った。
泰子は離婚届にサインと捺印を行った。
道心は離婚届の泰子のサインと、捺印を見て、大いに満足した。
(離婚が決着するのは、まだまだ先と思っていたのに・・・。こんなに早く決着するとは。しかも、こんな劇的な方法で)
(何と言う幸運。これで、小波と永心を迎えられる。嬉しい。余りに嬉しくて、飛び上がりたい位だ)
道心は教祖室を出て行く泰子の後ろ姿を見送りながら、もう少しで
「ありがとう」
と、言う言葉を口にする所だった。