教組の花嫁
純と小波は永命に口を付けた。
「わあ、おいしい」
「普通の日本酒と全然違いますね」
小波が永命を一口飲んで。
「だろう。この酒は幾ら飲んでも悪酔いをしない。うちの自慢の逸品だよ」
道心はお寿司、おでん、朝干しのするめを肴に、上機嫌で酒を飲んだ。
「教祖様、ひとつ質問をしてもいいですか?」
小波が神妙な顔付きで質問をした。
「何かね」
「私、瞑想をしても中々無の境地に入れないのですが、どうすればいいのでしょうか?」
「集中する事だね。わくわく命の泉わくと言う言葉に全神経を集中させるのだ。集中すれば、澄み切った泉の底から水が湧き出して来るのが見えるようになる。その湧き出て来る水に、全神経を集中させる。そうすれば、いつしか水の無い無の世界が訪れるのだ」
道心が威厳のある声で呟いた。
「私、今度やってみます」
小波が道心の目を見て言った。