教組の花嫁
次の日の朝。
道心は教祖室の執務デスクで、基調を成す話の筋書きを作成するつもりでいた。
道心が机の上の封筒に気が付いた。
封筒の中には、一枚の便箋が入っていた。
道心が振込み先、新住所に目を通し、次に短いメッセージに目を留めた。
長い間お世話になりました。居城を明け渡します。
大石内蔵助の心境です。では、お元気で。さようなら。
泰子
「大石内蔵助の心境か・・・」
道心が、メッセージを読んで苦笑いをした。
「俺はさしづめ吉良上野介という所か。悪い事をしたな。その代わり、慰謝料は奮発してやる。それで勘弁してくれ」
道心が、便箋を指で持って軽く頭を下げた。