教組の花嫁
道心が便箋を封筒の中に仕舞うと、百合葉に電話を掛けた。
「あっ、私だ。泰子が昨日の夜、家を出た。すまんが、家の掃除を頼む」
「奥様、家を出られたのですか・・・。掃除の件は、了解しました」
百合葉が受話器を元に戻した。
(奥様が・・・ついに家を出た。私も今まで、よく忍耐出来たものだわ。でも、これで、一件落着。まずは、めでたし、めでたし)
百合葉は胸を撫で下ろすと、1階の空き部屋に向った。
百合葉が、空き部屋に足を踏み入れた。
(あの高慢な女が居なくなった。正妻と言う錦の御旗で、どれだけ煮え湯を飲まされ、泣かされたか)
(追放。この事を成し遂げる為に、どれだけ策を考えたか。そして、実現する事の難しさを思い知ったか。それが、それが・・・。こんなに呆気なく実現するとは・・・)
感無量。
百合葉は、知らず知らずに涙が込み上げて来て、それを思わず指で拭った。