教組の花嫁
ひと部屋、ひと部屋で立ち止まり、百合葉が感激深く部屋を見て回った。
泰子が、寝室に使っていた10畳は優にある部屋。
その部屋に入ると、百合葉の脳裏にある考えが浮んだ。
(この部屋は壁紙を代えて、私と教祖様の寝室に出来ないかな)
そう考えると、自然とその考えが、言葉となって百合葉の口から出た。
「キングサイズのダブルベッドがいいかな。いや、歳を考えると、ツインベッドのほうが・・・」
「永心様は子供部屋で、一人でお寝んねしてね」
百合葉の口から、突飛な言葉が飛び出した。
(あの女はいらない。跡継ぎを生むのが、そもそもの役目だから。役目が終わったら、さよならね。では、どうして追放するか。これから、ゆっくりっと策を練るとするか)
百合葉がにんまりと微笑んだ。
「そろそろ掃除を頼まなくちゃ」
百合葉が、携帯電話から清掃スタッフに電話を入れた。
引越しで家具を引っ掛けたのか、壁紙が1箇所破れている。
壁紙の破れをぼんやりと見る百合葉の目は、遥か遠い先を見詰めていた。