教組の花嫁
百合葉が、顔を覗かせて無言で永心に話し掛けた。
(永心。私がお母様よ。会いたかったの。そうなの。永心、どうしたらお母様と一緒に暮らせるかな。いい方法は無いですか。お母様は、必死で考えますからね)
百合葉が、心の中で永心に話し掛けた。
「永心様の寝顔は、本当に可愛いんだから。ほっぺが赤くておりんごみたい」
百合葉が、人差し指で永心の頬を軽く触った。
「おっぱいをいっぱい飲みますから、それで元気がいいのかな」
小波が、永心の頬の辺りを見ながら言った。
(乳を飲ませる母親・・・)
百合葉の脳裏に、ある考えが閃いた。
昔。
皇室や、将軍の子供には、乳母がいた。教祖の子供にも、教育上、実の母親より、しっかりした乳母がいても可笑しくない。
(天皇学ならぬ、教祖学を子供に徹底的に叩き込むには、理知ある乳母が絶対に必用ではないか)
(乳母か。こんないい方法があるなんて、今まで思いも寄らなかったわ)
百合葉が、永心を見てにんまりと微笑んだ。
小波は百合葉の微笑みの奥に、陰湿な企みが隠されているとは、知る由も無かった。