教組の花嫁
「乳母は誰に頼まれますか」
澄ました顔をして百合葉が、道心に尋ねた。
「千葉君。君以外に誰がいるというのかね」
「えっ、私ですか。私に乳母みたいな責任あるお勤めが、果たして果たせるでしょうか」
百合葉が精一杯惚けた。
「君しかいないよ。君が言い出した事だし。君でいいじゃないか」
道心の腹は、すでに決まっている。
「本当に私でいいでしょうか」
「私はそのつもりだが」
「教祖様がそこまで言われるなら、お引き受けしない訳にはいきませんね」
「悪いが引き受けてくれないか」
「わかりました。それでは、私が引き受けるとします。それで、私が永心様のお宅に通えばいいのですか」
百合葉が、心にも無い事を言って道心に鎌を掛けた。