教組の花嫁

 集中の度合いをさらに深めて行く。


 泉が消えて暗闇の世界が見えたように、小波は思った。



 (あっ、これが無の境地かも知れない)



 小波は安らぎの中に湧き上がる、今までに感じた事の無い深い深い喜びを感じていた。そして、自分を無の境地に誘ってくれた教祖の道心を素晴らしい人物、自分を厳しく律する真の宗教家だと感じていた。


 (では、なぜ母が新興宗教『命の泉』を恨んで死んで行ったのか)


 「なぜなの?」


 小波は瞑想を中断し、小さく呟いた。



 目を閉じ、小波は忌まわしい18年前を思い起こした。






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