教組の花嫁
父はその年の3月に急性骨髄性白血病と診断され、市内の病院に入院。
化学療法などが効き、父は9月に一時退院した。
自宅で療養している時に、『命の泉』の幹部信者が二人、自宅を訪れた。
「病気を治すためには全財産を教団に寄付することだす。ほんなら、星野さんの病気が幾ら難病でも、必ず治りますがな」
「寄付をケチったら、また再発して命取りになりますで。今こそ信仰が試されておますのや」
信者二人は病気の弱みに付け込んで、父に全財産の寄付を強引に勧めた。
母親の紗代は全財産の寄付をする事に猛反対をした。しかし、教祖に心酔していた父は、病院代として一部を残しただけで、財産の殆どを教団に寄付してしまった。
それから、2ヶ月程して父は病気が再発し、再入院。あくる年の早々に父は、40歳の若さで他界した。
「あんた、何で死んだんや。ううう・・・」
母は父の死にショックを受け、泣くばかり。
「あんたを殺したのはあの宗教や。あの宗教が憎い」
「主人を返せ。財産を返せ」
「あんた、あんた、あんたあ~~~」
母の紗代は父の遺体にすがり付いて、わんわんと泣きじゃくった。