教組の花嫁
 
父の葬式が終わった後も、母は元気が無かった。


 「あんた」

 「あんたあ・・・」


 時折、父を小さく呼んでは、母はしくしくと泣いていた。


 「何でよりにもよって白血病なんかに」


 「全財産をあんな宗教に奪われて・・・」


 「言う通りに寄付したのに死んでしもたやないか」


 「畜生!あんな宗教の言い成りになるから、こんな事になるのや」


 それからも、母は独り言をぶつぶつと呟いて、深く沈み込んでいた。


 「騙されたんや。あんたはあほや。大あほや」

 母は宗教を恨んだ。


 「うちと小波は、どないして生きて行ったらええんや」



 「インチキ教団が憎い!」


 
 「許せへん。許せへんから」

 「恨んだる。絶対に恨んでやる」


 母の独り言は激しさを増して行った。





< 36 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop