教組の花嫁
道心が小波に話し掛けた。
「泉の底の一点を見続けているかね」
道心の言葉で小波は我に返った。
「ははい、教祖様」
慌てて小波が返事をした。
「この部屋は瞑想をし易いかね」
道心が小波に尋ねた。
「はい、とってもし易いです」
「気に入ったのなら、これからもこの部屋を自由に使ってくれても構わないよ」
「本当ですか、教祖様」
「本当だよ。でも、私はいつも君の相手は出来ないが、それでもいいのなら、好きにしてくれたまえ」
道心は凛々しく、しかも優しかった。
「ありがとうございます」
小波が道心に礼を言った。
(教祖様は、本当に尊敬出来る素晴らしい人だ)
小波は過去を思い返しても、母がなぜこの宗教を恨んで死んだのか、本当に良くわからなかった。