独りじゃないよ
廃墟のホテルに行って数日後の朝、声が出なかった。


いや、出せなかった。


声を出そうとすると激痛が走る。


親は仕事に行っていて居ないし、兄弟は学校に行っていて居ない。


喉の痛みと何とも言えない不安感から涙が出そうになる。


なんでこういう時って、こうも無性に寂しくなるんだろう。


しょうがないから、私は制服に着替え簡単に化粧をして近くの病院に向かった。


病院で受付を済まし熱を測ると、三十九度を軽く超えていた。


ちょっとキツイ気がしてたけど、まさかこんなに熱があるとは……。


よく歩いて来れたな。


先生に診察してもらい、まさかの入院宣告。


喉が酷く腫れているらしく、原因不明。


採血の為看護師さんに注射を打たれた。


血管は細い方で、他の病院に行くと失敗される事もしばしば。


でもこの病院には小さな頃からお世話になっている為、そんな失敗をされる事はない。


昔からいる看護師さんもいるから、安心して任せられる。



「未亜ちゃん、点滴するわね」



喋りたくなくて、コクコク頷き看護師さんの後に着いて歩いた。





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