僕らの終わりと始まり

夏

久しぶりだね。

ここ何年か、人と話をしてないんだ。

大きくなったんだね。





ふと、君は僕のほうを見上げた。

「しかし、久しぶりだなぁぁ、もう誰もいないとなるとちょっと淋しいよな。」



僕も淋しい。


ふと昔の風景を思いだしていた。
いろんな事が昨日のように鮮明に思い出せる。

夏になれば川で遊ぶ子供達、そして静かに見守る大人達。

滝から飛び込んだり、川でできた自然の滑り台を滑ったりして、擦り傷を作って怪我をして笑顔いっぱいで家に帰っていた。

傍では虫達が涼しげなメロディーを奏でていた。

山を少し登ったところにある公園では恒例のお祭り。屋台が並びお菓子を頬張る大人達と子供達。

輪になって盆踊りを楽しんで、、、。
ドンドドドンってね！

最後は花火大会で締めくくり。

田舎道だったけれど、車もビュンビュン通っていた。


いつもの時間になると、遠くから灰色の古びた車がこっちへ向かって来る。

いつも同じ時間に会いに来てくれてるおじいさんとおばあさん達だ。

昔ある時、おじいさんとおばあさんが散歩から帰る途中、遠くからくる車が道をそれて僕と老夫婦の方向へ向かってきたんだ。

ドカン！

いたい！

車は僕にぶつかって、僕の後ろにいたおじいさんとおばあさんは、ケガひとつなく助かったんだ。

僕は傷がついたけど、おじいさんとおばあさんが無事で本当に良かった。


その後、僕の傷を直しに来てくれて、それ以来よく会いに来てくれるんだ！


僕はすごくうれしかった！
みんなもよく会いに来てくれるようになったんだ。









そうだなぁぁ。

にぎやかだったなぁ。





君と会うのもこれが最後かも知れないんだよね。



君は無言のまま道の先を進んで行った。

誰もいなくなった今も僕は仕事中。

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