僕らの終わりと始まり

とうとう君が見えないくらい、道の先へ行ってしまった。



僕は君のおじいさんがいた頃からずっとここにいたんだよ。

君が生まれた時もずっとここにいたんだよ。

そして、これからもずっとここにいるからね。

だからたまに会いに、ここへ来ておくれ。

人が居なくなるとちょっと淋しいから。


なんだか秋になると淋しくなってしまう。
と同時に懐かしくもなるんだ。



秋になれば紅葉シーズン。みんなキレイな紅葉を見に山道を登った。

木々全体がまるで色をつけたような彩りで鳥達がメロディーを奏でて踊っていた。

そして、家で作ってきたお弁当をひろげての昼食。

みんな、みんな笑顔いっぱいで、お弁当を口に頬張っていた。

やがて夕陽が沈み、紅葉達が更に色鮮やかさを増していってた。

みんな山道を下りながらその道中を楽しんでお家に帰って行ったあの頃。




ある時間になると、いつも来てくれるおじいさんとおばあさん。


僕の事、無視する人もいるんだよ!


ここのみんなは、僕の事ちゃんと見てくれるんだ!


なんて、うれしかった事、楽しかった事、悲しかった事、いろんな話をしたんだ。
「そうかぁ、そいつはひどいなぁ。」

「うん、そうだなぁ。」

ってどんな話も聞いてくれた。











そうだなぁぁ。

にぎやかだったなぁ。






君と会うのもこれが最後かも知れないんだよね。


君はもう見えなくなっていた。



誰もいなくなった今も僕は仕事中。

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