僕らの終わりと始まり

回想

君が会いに来てくれた日からもう1ヶ月はたった頃だったかな?

ふと、昔の風景を思いだしていた。

いろんな事が昨日のように鮮明に思い出せる。


雪が溶けはじめ、埋もれていたふきのとうが顔を出しはじめた頃だった。


久しぶりに遠くから懐かしい音がしたんだ。

ブーーーンってね!


そう、車が遠くからこっちへだんだん向かって来ている。

色は灰色でけっこう昔の古びた車だったけど、大切に使っているのか、本当にキレイな車だった。



あっ!あの車、僕知ってる!

僕は青ランプを黄色ランプ、そして赤ランプに急いで切り替えたんだ。

車は徐々にスピードを落として僕の前でちゃんと止まってくれた。

昔、僕のところをよく通っていた車だった。

中には運転席と助手席に二人乗っているのが分かった。

あのおじいさんとおばあさんだった。



僕は懐かしさと嬉しさで、ずっと車を止めておきたかったけど、そうはいかない。

仕事をしなくちゃ!


ほどなくして、僕は赤ランプから青ランプへ切り替えた。


老夫婦はそのまま車から降りて僕に話しかけた。

「久しぶりだな。会いたかったよ。元気にしてたか?」

「あの時、あなたがいなかったら私たちはどうなっていたか、本当にありがとうね。」


僕はうれしくてちょっとだけ泣きそうになった。



あの時、とても痛かったけど、全然平気!

傷を直しに来てくれてありがとうね。

おじいさんとおばあさんに会えて本当にうれしいよ!



懐かしい話しに夢中になって気が付けばもうすっかり陽が落ちていた。

また会いに来てね!

「元気でな!また来るよ。」

「それじゃまたね!」


おじいさんとおばあさんは車に乗って帰って行った。








そうだなぁ。

にぎやかだったなぁ。






みんなと会うのも、これが最後かも知れないんだよね。






信号機として僕はしっかり仕事中。


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