その手に触れられたくて


「ふぅ…」


お風呂から上がってホッと一息。


――カチャ


リビングに戻ると、彼がソファーにもたれ掛かってテレビを見ている。


「おいで?」


だけど、すぐに私に気付いて両手を広げてくれて、私はそんな彼の胸に飛び込む。


「お湯加減大丈夫だった?」

「うん。いつもありがとう…」

「いーえ。さっ、早く頭乾かさないと風邪ひくよ」

「あっ…」


頭を撫でてくれた手が離れて、彼がソファーから立ち上がると凄い寂しさを感じて、思わず服の裾を掴む。


「すぐ戻るから。ね?」


微笑んで、私の手を一瞬そっとその綺麗な手で包むようにしてからゆっくりと離す。



同じ家に居るのにちょっと離れてるだけで姿が見えないだけで、不安な気持ちになる。


「はぁ…」



ため息をついて、彼が居なくなった広いソファに寝そべるようにしながら思う。

こんな情けない姿は外では見せられない…。



家でだけ。

彼にだけだから。



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