その手に触れられたくて
「よし、乾いた……って、あれ?」
「…………」
返事をしなくなった私に、一瞬彼の手の動きが止まる。
「また寝ちゃったか…」
そう呟いてから、また私の髪を優しくすくように撫でる。
この優しくて大きい手が好き。
本当は、仕事が忙しくなって、切ろうと思った髪。
だけど、それを彼に言った日から、彼が髪を乾かしてくれるようになった。
この長い髪が好きだからって。
夢現になりながら私の髪に触れる彼の手が心地良い。
忙しい1日の中で、流れる穏やかな時間。
明日も明後日も、ずっとずっと、この手に触れられたいから、私はこれからも髪を伸ばし続ける―――。
【end】