眠り姫の唇
あれから2週間。
信じられない事に、岩城はあんまり遅くなる時以外、ほとんど瑠香を車に乗せて自宅に帰った。
瑠香に岩城の行動の意図はさっぱり分からなかったが、毎回脅されたり、丸め込まれたりして気がついたら岩城のいえのソファーでぼんやりテレビを見ていたりする。
瑠香はそんな自分にも結構驚愕していた。
キスはする。
岩城との極上なキスを。
でも不思議とまだその先には進んでいなかった。
毎回このまま最後までされてしまうのではないかと思ってしまうほどの濃厚なキスを交わしつつも、瑠香が少しでも嫌がったり、半泣きになったりすると、岩城はあっさりその上から退く。
その方が瑠香にとっては都合は良いのだが、やっぱりどうしても思ってしまう。
からかっているだけなのか、はたまた自分に魅力がないのか。
悩んでも答えは所詮岩城の中なので瑠香はあんまり考えないようにしていた。
「高江ー。」
遠くの方から前川の声が聞こえる。
ふと視線を上げるとクリアファイルをペラペラさせながら、前川がニッコリこちらに笑いかけている。