眠り姫の唇
「ああ、そうだな。まぁはじめからそうなるとは思ってたが。あいつら、良いコンビだしな。」
そういって岩城はビールの缶をシンクで濯いでゴミ箱に入れる。
「そんなんですか?」
「付き合う前から喧嘩しては言い合いしてたがな。でも、それでもいつも一緒にいたなぁ。なんだかんだ言いつつ。」
いつも一緒かぁ。
「…前川先輩が仕事辞めたら…寂しくなりますね。」
「それ、本人に直接言ってやったらどうだ?喜ぶぞ?」
「やですよ。なんか恥ずかしいです。」
「ははっ」
岩城は笑って瑠香の隣に座る。
そしてぬいぐるみにでも抱き付くように瑠香を腕の中に収めた。
瑠香は一瞬ドキリとしたが、デカい子供みたいに頭を擦り寄せてくる岩城を振り解こうとは思わなかった。
「……。」
ここからは岩城の表情は見えない。
…今、どんな顔してるんですか?岩城さん…。
なんとなく瑠香は岩城の頭を撫でる。
「(よしよし…)」