眠り姫の唇
ウイーンウイーンと回っている洗濯機の前で、Tシャツに短パンといった女子力ゼロの格好をした瑠香はひたすら首を捻っていた。
自分のうちよりかなり新しい型の洗濯機に嫉妬する。
日曜日。
なんで自分はこんな所で、自分の服を新型洗濯機で洗っているのだろうか。
しかも男物の服と一緒に。
うーん。
「最近、いつ帰ったっけな。」
家賃が最近勿体無く感じる今日この頃。
瑠香はこっそりベッドを覗く。
殺風景だった岩城の部屋は、所々女物の鏡やら化粧品やら小物やらでいきなり生活感が出て来た。
「…まるで同棲してるみたい。」
「……ん?…」
「なんでもないでーす。」
寝起きの岩城はしばらくボーっとベッドの上であぐらをかいている。
本当にこの男は寝起きが悪い。
いつも普通の人では早過ぎるだろうと思う時間帯に目覚ましをセットしている。
冷たい瞳が更に鋭さを増して、寝ている脳を一生懸命起こそうと躍起になっている。