眠り姫の唇
岩城の家にくるようになって、もうかれこれ1ヶ月ぐらいになるんじゃないだろうか。
「まだ眠いですか?目覚まし20分前に止まってましたよ。どーぞ。」
コトンと机の上にコーヒーを出す。
岩城はいつもブラックだ。
瑠香もボスッと岩城の隣に腰掛け、自分の為に入れた甘めのコーヒー(もちろんたっぷりミルク入り)をすする。
はぁ、美味しい。
朝からコーヒーを飲む習慣は今まで無かったが、岩城がいつも飲むのでついつい自分にも身に付いてしまった。
岩城は普段考えられないようなボサボサした頭でそんな瑠香の様子をボーっと眺める。
「岩城さん?コーヒー冷めちゃいますよ?」
すると岩城はボーっとしたまま、スッと瑠香のカップを取り上げ、目の前の机に置いた。
「あ!何するんですか。飲みかけな……んっ」
ボスッ
しまった。と瑠香は思った。