眠り姫の唇


岩城の寝起きは別の意味でも最悪なのだ。


今日はせっかく岩城が寝ぼける前に布団を抜け出したのに、これでは元も子もない。


ほんわーとした表情の目の前の男は、リラックスしたまま瑠香に信じられないようなキスを降らせる。


「ふ…っ…ん…」


これが朝の挨拶のキスなら、岩城が本気を出した時、自分は身体半分ぐらい持って行かれるのではないかと瑠香は思った。


何度もキスを繰り返すのに、この甘い痺れには中々慣れない。


とろんと全身が麻痺して来たら、もう後は岩城の自由だ。


舌が舌に絡まり、朝からいやらしい音に包まれる。


「…っ」



こっちは涙目になりながら必死なのに、目の前の男のこの余裕の表情ったらない。


半分眠りに入りながら、ただ美味しそうに瑠香に噛み付く。


悔しいから、早くこの鍛えられた身体の下から抜け出そうともぞもぞさせてみるが、反射的に押さえつけられ、更にキスが深くなる。



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