眠り姫の唇
「…ん…っ」
時々思ってしまうのだ。
「……は…っ」
このまま、この男に最後までされてもいいかな。と。
このまま流されて、ただひたすらこの男に甘く翻弄されてみたいと。
「……っ…っ」
でも、やっぱり何かが悔しくて、瑠香は今日も抵抗を繰り返す。
「ちょっ、…い、岩城さんっ…起きて下さい!」
ベシベシベシと頬を叩かれて岩城がゔゔ…呻く。
「起きましたか?はい!コーヒー飲んで下さい。」
ブラックのカップを差し出し、瑠香は慣れた様子で岩城の跳ねた髪を手ぐしで直す。
「…。」
「せっかくの男前が台無しですね。野生の白クマみたい。」
グワシッグワシッとさっきのお返しとばかりに乱暴に髪を直し、瑠香はふと、怪訝な顔をしている岩城の顔を見つめた。
「?どうしたんですか?」
「…これ、本当にブラックか?口の中が砂糖とミルクの味がする。」
「あー…まぁ、自業自得です。そのコーヒーで流し込んで下さい。」
瑠香はじとっと岩城を見据え、キッチンへ逃げた。