眠り姫の唇


本当に困った男だと思いながら味噌汁を混ぜる。


今日は和食の気分。


瑠香は気を取り直して魚をひっくり返した。


「腹減った…」


ノロノロと起きてきた岩城は今まで着ていたTシャツを歩きながらガバッと脱いで、ガサッと洗濯カゴに入れた。


その綺麗な身体を瑠香は見てみぬフリをして味噌汁に集中する。


ホントにデリカシーがない。


ちょっとは気にしろ。


ここに女の子がいるんですよー。






“俺の飼い猫”






そんないつかの岩城の言葉を思い出して、ああ、ぴったりかもと思った。


岩城は多分、自分の事は人間の女だとは思っていないんだ。


本当に、寂しさを紛らわす同居人、もしくはペットかなんかだと認識している。


すごく納得できる考えに、瑠香は一人でうんうんと頷いた。


「なんだ?そんなに美味しく出来たのか?」


一人で変な行動をする瑠香に岩城があくびをしながら近付く。

ふわっと香る岩城独特の涼しい男っぽい匂いに、勝手に心臓が喜んだ。






ほんと、やられてる。





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