眠り姫の唇

暗くて表情が見えない。


でも、怒っているような、切羽詰まっているような、そんな気迫はひしひしと伝わってくる。



「俺を翻弄して、楽しいか?」

「え、」


そう、絞り出すような声を出して、岩城は瑠香の唇を塞ぐ。

「!」

それはいつもの余裕ある岩城からは考えられない荒々しさで。


「…っ、お前がよく分からない。」

強く首に噛み付かれ、悲鳴に似た声が出る。

「振り回されるこっちの身にもなれ。」


服をたくし上げられ、肌が露わになる。


瑠香は焦った。


…岩城さんからこんなことされるの、初めてだ。


「やだっ、岩城さんっ!」


「もう限界だと、言っただろ?」


そう必死な声で囁かれ、瑠香の体温は一気に上がった。


岩城の唇が、白い肌を滑る。


言いようのない刺激で、瑠香は身をよじった。


逃がすまいと瑠香を拘束する逞しい腕に力が入る。





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