眠り姫の唇
「やぁっ!ちょっと、降ろして下さいっ…!」
バタバタ暴れる瑠香を長身男は子供でも抱くように軽々持ち上げる。
「ちょっ…触んないで!」
更にベシベシとヒールで殴ってくる瑠香に一別を送り、岩城は鬱陶しそうに唸る。
「ウルサい。ちょっとは大人しくしろよ。」
そう問答無用で車の助手席に瑠香を押し込むと、気がついたときには夜の街へと二人を乗せたそれは走り出していた。
「…。」
…男の人の車の匂いがする。
岩城も瑠香も、押し黙ったまま時間だけが過ぎていく。
いったいどこに連れて行かれるのか。
…考えただけで寿命が縮む。
瑠香はただひたすら仕返しされるんじゃないかと小学生のようにプルプルしていた。
するとほどなくして、車がスピードを緩める。
「(え、)」
薬局にスッと入っていく車に瑠香はただ驚いていた。
キッと綺麗に駐車された車からあっさりと岩城は降り、窓越しに瑠香に忠告する。
コンコンっ
「おい、また逃げんなよ。」