眠り姫の唇

唯が写真を撮ってる時の目って、こんな感じかもしれない。


一瞬も逃さないと覚悟したような目。


唯のこんな所も好きだ。


「…落とし穴に落とされたような気分にさせる男なの。」


瑠香が観念したように告げる。


そこからは減らないつまみが冷める一方だった。








………‥







“泊まって良い?”

と甘えるように訪ねる唯を二つ返事で部屋にあげ、瑠香はお客用の布団を床に敷く。



「せまっ!」


「そら世界よりかは狭いよ。」


驚愕する唯を適当にあしらって、化粧を落としに洗面台に立つ。



…“そんな顔”しているだろうか。


鏡に映った自分をまじまじと見つめる。


唯のおかげで少し元気は出たはずだ。


「ねえ!もう一杯飲まない?」

部屋から聞こえる声に瑠香は顔に水を掛けながら叫んだ。


「冷蔵庫に入ってるー!」


そう声をかけるかかけないかの所で冷蔵庫の扉がガシャンとなった。


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