眠り姫の唇


帰国にかんぱーいと適当にかけ声をかけながら酎ハイの缶をぷしゅっと開ける。

ビールがないと喚く唯を適当に黙らせて、布団の上でだらだら飲んだ。


おつまみはチョコにスルメにせんべい。


寄せ集めもいいところだ。


「会社ってどんな感じ?」


「フツーだよ。だいぶ慣れたとは思うけど。大量の人と普通に喋れるようになった事は大きいかな。」


社会人になってからだいぶ人見知りが直ったように思う。


むしろ克服しようと思いすぎて少し偉そうになってしまっているぐらいだ。


かわいげの無さに拍車がかかる。


「唯は世界飛び回って変わった?」


中身は全然変わってなさそうな唯に何気なく聞いた。


「まぁ、色々ね。根本的な事が変わったかも。」


そう遠くを見ながら語る唯に瑠香は意外そうな顔をする。


学生時代から一回も自分を曲げようとしなかった友人が根本的に変えられてしまう出来事とはどんな事だろう。



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