眠り姫の唇
「もうね、自分が揺らいで揺らいで。日本では常識だと思ってた事が、他では恥ずかしい事だったり色々するじゃん。考え方一つでもさ。それが納得出来る内容だったりすると、今まで固めて来た自分っていうのが崩れて仕方なかったの。写真にまで影響して、統一性がなくなったりして、私向いてないんじゃないかって何回思ったか。」
へらへら笑いながらも、彼女の目は笑っていなかった。
「…唯でもそんな事あるんだ。」
「ハハッ。私を何だと思ってるの。」
「唯と言う名の爆撃機。」
「なにそれ。」
「強そうでしょ。」
「あ!話し変わるけど初対面の時覚えてる?私未だにに思い出して笑ってんだけど。」
「え?あーもう忘れてよ。」
「忘れられる訳ないでしょ!私が学食でカレーを瑠香の素うどんに転けてぶち込んじゃった時。瑠香なんて言ったか覚えてる?!『やった!カレーうどんになった!』って言ったのよ?アレほんとウケたわー。」
「…だってお金ないけどお腹は空いてたのよ!ほんとはカレーうどん頼みたかったのに素うどんにして…。そしたら空からカレーが降ってくるんだもん。しかも綺麗にカレー皿がフタになって汁も飛ばなかったし、あれは奇跡だったわ。」
「あはは!白飯も一緒に入ってるっての!」
二人で軽く笑いあって、その後も今ミキやカズヨはどうしてるかとか、次の写真集発売はいつだとか、たわいもない話をした。
……
「電気消していい?」
「あ、豆電は点けといて。じゃないと寝れない。」
「OK私もその派。…唯、よく海外で寝れてたわね。」
いったいどうしてたんだろうと思ったが、まぁ唯のよく分からない理屈で切り抜けて来たんだろう。