眠り姫の唇
眠りかけていた脳が活発に動き出す。
「あの唯に?!」
「ちょっと、失礼なんだけど。」
「どんな人?!」
ガバッと布団から飛び出して唯を見つめる。
唯にはそういう浮いた話は一切なかった。
そもそも本人がそういう事には興味がなさそうに見えた。
「…時々同行してくれる、イギリスのカメラマン。」
「イギリス。」
意外だ。
唯はヨーロッパには行っていないのに。
「…知人の紹介でね、よく一緒に撮影に行ってくれるようになったんだけど。…なんかもうびっくりして。文化の違いなのかな?まさか付き合ってもないのにいきなりプロポーズされるとは思わなくて。」
唯には珍しく、しどろもどろに喋る。
余程困惑しているのであろう。
こんな唯、初めて見た。
もしかしたら、これを相談したくて会いに来てくれたのかもしれない。
「どんな人なの?」
急に目の前の女の子が可愛く見えて、瑠香はほくそ笑みながら訪ねた。