眠り姫の唇


瑠香は冷静になって考えてみた。


まず、二通りの出来事が考えられる。


本当に岩城が酔っ払って、女の人の部屋に行き、間違って瑠香に電話しながらそういうことになってる場合。


そして、誰かの策略で、わざとそういう電話がかかってきた場合。


そこまで冷静に分析出来たの には訳がある。


まず、電話から岩城の声が一切聞こえなかったこと。


そして、まるで口元で喋ってるように鮮明に彼女の声が聞こえてきたこと。


…もう一つ、一番考えたくない答えがあるが。


それは余りにも傷付くのであえて外してあるけれど、でも、ただ酔っ払ってたまたま手が滑ってたまたま瑠香にかけてきたという無理がある設定よりかはリアリティがある。


「(私が嫌になって、ワザとそんな電話を彼女に頼んだ場合…。)」


もしそんな事ならこんな遠回りしなくても潔く離れてあげる。

プライドと気合いだけで。


少しは泣くかもしれないけれど。


でも。


瑠香は手の中の合い鍵をギュッと握って、首を振った。


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